社会保障財源の全体像②
1. 今日やること
前回は、社会保障財源の全体像をマリメッコチャートで表現した(社会保障財源の全体像① - 社会保障の勉強ノート)。
このチャートを使い、日本の社会保障財源についてもう少し分析を深めよう。
2. 税と保険料の財源構成
はじめに、マリメッコチャートを税財源と保険料財源に色分けしてみると下図のようになる。一見して社会福祉分野が税財源で賄われていることや、後期高齢者医療制度・介護保険・基礎年金の約半分が公費投入で賄われていることが分かるだろう。
3. 医療保険・介護保険・年金保険
同様に、社会保険(医療・介護・年金保険)について色分けすると、以下のようになる。
ただし、今後の給付費の予測によると、そのような社会保険の占める割合は以下のように変化する。元となっている内閣府の経済前提の成長率が高すぎることもあり、予測の実数値は信用できるものではないが、給付費の伸びの割合(介護保険が高く、年金が低い)というトレンド自体は信用できるものである。
4. 社会福祉・労働保険の割合
最後に、社会福祉と労働保険の割合を色分けすると以下のようになる。なお、社会福祉の税財源(社会保障分)に占める割合はおよそ25%である。
また、こうしてみると緑色で示した労働保険の小ささが際立つ。日本は対GDP比の積極的労働市場政策の割合が小さいとよく言われるが、(失業率が低いとはいえ)構造的な労働市場改革が後回しになっていないか、と少し不安になる図である。
また、紫色で示した社会福祉のうち、子ども・子育て分野が占める割合はさらに小さいし、労働保険のうち雇用保険は育児休業給付の原資になることを考えると、少子化対策に充てられている予算が非常に小さいことが分かる。このため、例えば年金の財源から一部を(年金制度の持続可能性を高めるものでもあるのだから)少子化対策に回すことができないか、といった方法が検討されうる。