社会保障財源の全体像①

 

1. やること

厚生労働省が作成している「社会保障財源の全体像(イメージ)」という資料がある。

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https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/dl/260328_01.pdf

 

社会保障費は「一般会計」以外に年金・労働保険などの「特別会計」を経由し、また補正予算等も反映されるため、いわゆる「当初予算の一般会計の歳入・歳出」を示した(よく見る)円グラフだけでは、その全体像を掴むことができない。また、一部の医療保険の保険料など、国の特別会計を経由しない経費や、地方自治体の自主財源で賄われる費用などもあるため、国・地方・保険者からなる統合政府の歳出・歳入純計を考える必要がある。

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財務省「令和3年度 一般会計 歳出・歳入の構成」

財政に関する資料 : 財務省

それらを網羅的に記載しているという点で、上掲の厚労省の資料は非常に面白く、社会保障財政についての理解を深めるために役立つのだが、厚労省版の「社会保障財源の全体像」には金額の内訳が載っていないという大きな欠点がある(えてして純計は厳密な計算が難しいため、数字を載せることを忌避したのだろう)。

そこで、厚労省財務省の令和2年度決算資料をもとに、同様の資料を作成してみた。ただし、新型コロナウイルス感染症流行の影響をできるだけ反映させないようにするため、令和2年度に積立金や一般会計から巨額の財源補填がなされた労働保険(主に雇用保険)については、令和元年度の決算資料を用いた。

また、金額やシェアの割合を面積で表すマリメッコチャート(面積グラフ)の作り方については、以下のサイトを参考にした。

www.officetooltips.com

 

2. できたもの

各種決算書類等から数字を収集し、社会保障財源の全体像としてマリメッコチャート(面積グラフ)にまとめた。制度・項目間の資金移転については、国の特別会計を経由しているものであっても、元が保険料であれば保険料として参入している(例えば、国民健康保険には健保組合と協会けんぽから財源移転がなされているため、国民健康保険の歳入内訳にも使用者負担を記載している)。また、国と地方自治体の資金の線引きはとりわけ大まかな計算になっている(交付金などが多く、どこまでを自主財源と考えるかが難しいため)。

社会保障財源の全体像(イメージ)実数

社会保障財源の全体像(イメージ)実数

 

さらに、各項目に占める財源ごとの割合をパーセントで示した。

社会保障財源の全体像(イメージ)パーセント

社会保障財源の全体像(イメージ)パーセント

以上のような社会保障財源の全体像からは、パッと見ただけでも、

  • 財源構成における保険料の占める割合が非常に大きいこと
  • 金保険・医療保険が占める割合が非常に大きく、子ども政策に当てられている財源が(相対的に)非常に小さいこと
  • 厚生分野に当てられている財源が大きく、労働分野に当てられている予算が非常に小さいこと

などの情報を読み取ることができるだろう。

とはいえ、このチャートの面白さはそれだけではない。次回は、チャートから読み取れる事柄について、もう少し細かく分析していくことにしよう。